現在の新型コロナウイルスの状況と今後の動向

 コロナウイルスという言葉をコロナ禍になってから初めて聞いた方も多いのではないかと思います。

しかし、コロナウイルス自体は昔から風邪の原因となるウイルスとして存在していました。また、2003年に世界中に広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)、通称「新型肺炎サーズ」という名前に聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか。このSARSもコロナウイルスの一種なのです。このSARSは発生からWHOから終息宣言が出されるまで約1年の間に世界中で約8,500人が感染し、800人以上が死亡するという致死率がとても高い疾患でした。

 ではどうして、新型コロナウイルス感染症:COVID-19が終息に向かう気配がなかなか無く、こんなにも長引いているのでしょうか?

3つの観点で、季節性インフルエンザやSARSと比較しながらみていきましょう。

1 症状

 季節性インフルエンザは急激に38度を超える高熱、頭痛、筋肉痛・関節痛などに加え、咳、鼻汁などが出て、周りの人もインフルエンザにかかっていると分かりやすい病気です。

SARSも大部分の人が重症化して、重い肺炎を引き起こします。

こんなにはっきり症状が出てくれれば、学級閉鎖などでそういう人を隔離してしまえば、感染は抑えられるのです。

しかし、COVID-19は「軽症や無症状」の例が比較的多い。これが問題なのです。

その割に、感染力が強く、重症化するリスクもかなり大きい。症状が軽度の人が普通に日常生活を送るうちに他の人に感染させてしまい、感染経路も分かりにくくなってしまいます。

加えて、感染経路が分かりにくくなる理由は他にもあります。

COVID-19は感染してから症状がでるまでの時間が比較的「長い」のです。

インフルエンザでは1日~数日なのに対し、COVID-19は平均して5、6日、最大で14日程度もあります。これではいつどこで感染したのかも分かりにくくなってしまいます。

しかも「症状がでる前」から感染能力があるのです。

これでは、テレビでよく言われる「感染経路不明」というのも頷けます。

2 増殖する場所

COVID-19は現時点では、感染者のくしゃみ、咳、つばといった飛沫と一緒にウイルスが放出され、そのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染する「飛沫感染」が主な原因だと考えられています。

では、体のどこでウイルスが増殖することによって、ウイルスが放出されやすくなるのでしょうか?

まずは、同じコロナウイルスの一種のSARSからみていきましょう。

SARSは下気道(肺)で増殖します。ですから、もちろん飛沫感染もありますが、病院で医療従事者が気管にチューブをいれたときなどにより感染しやすくなります。

COVID-19は現時点では、感染者のくしゃみ、咳、つばといった飛沫と一緒にウイルスが放出され、そのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染する「飛沫感染」が主な原因だと考えられています。

対照的に、季節性インフルエンザと同様に、COVID-19は「上気道(のど)でも下気道(肺)」でも増殖します。これは口に近いことによって、ウイルスが放出されやすくなります。同じ空間で少し話しただけでも、感染してしまうということが起こるのはこのためです。

3 治療

感染症っていったいどうなったら治るのでしょうか?

答えは単純、体の中からウイルスがいなくなってしまえばいいのです。

ではなぜCOVID-19に対する有効な薬ができないのでしょうか?

まず、ウイルスの構造が非常にシンプルで薬の「標的」を定めにくいことがあげられます。また、人間の細胞に侵入しその機能を利用して増殖するため、人体に影響を与えずにウイルスにだけ作用する薬をつくるのが難しいのです。

現在、治療に使われている薬の代表として「レムデシベル」や「アビガン」などの薬名を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。これらはもともとエボラ出血熱やインフルエンザの治療薬でした。COVID-19に対しても、ウイルス治療薬として、同じように体の中からウイルスがいなくなるように日々研究が進んでいます。

しかし、なかなか特効薬が見つからないため、今出ている症状を少しでも和らげて、自分自身の免疫力に頼らざるを得ない状況が続いています。

いつCOVID-19は終息するの?

さて、現在のCOVID-19についてみていきましょう。

2019年11月末に発生したCOVID-19ですが、2020年1月8日現在、日本の総感染者数26.7万人、死亡者3,674人、新規感染者に関しては7500人/日を越す勢いとなっています。世界では総感染者数8820万人、死亡者190万人となっています。

緊急事態宣言が出され、世界ではロックダウンが行われている国や地域もあります。医療状況は限界を迎え、医療従事者も肉体的にも精神的にも追い詰められて来ました。また、経済状況も悪化したことで、生活が苦しくなっている方も多いと思います。


いつになったら、COVID-19は終息するの?という疑問は皆さんお持ちだと思います。

答えは、「1年になるか、2年になるかわからない」のが現状です。

まだまだCOVID-19に確実に効く薬が実用されるまでには時間がかかるでしょう。

  「インフルエンザみたいにワクチンを開発すれば良いのでは?」

そんな疑問をお持ちな方も多いはず。ワクチンとは活性を失わせたウイルスなどを疑似的に感染させることで、体の中に抗体という免疫物質を作り出し、感染を防ぐものです。しかし、COVID-19はせっかく作った自己抗体が減るのが早いとの報告もあり、体に対するデメリットなどを考えると安全なワクチンを大量生産するにはまだまだ時間が必要です。

では、私たちはどのように新型コロナウイルスCOVID-19と向き合っていけばよいのでしょうか?

5月1日に発表された新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」*1において、感染拡大を予防する「新しい生活様式」の普及が大切だと述べられています。

感染拡大リスクが高い「3つの密」を徹底的に避けるとともに、手洗いや身体的距離確保といった基本的な感染対策の実施を継続していくこと、仕事の場面でもテレワーク、職場への時差出勤、テレビ会議など接触機会の削減、大規模なイベントの中止や延期などが提案されており、コロナウイルスが身近になった新しい生活様式に私たちは慣れていかなければなりません。

だからといって、絶対に外出するなといっているのではありません。



感染防御をきちんと行ったうえで、公園で散歩したり、買い物に出かけたりと、自分の精神的な健康と感染リスクを考えたうえで、新型コロナウイルスCOVID-19と一緒に「新しい生活様式」を実行していきましょう。






*1:新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」  https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000629000.pdf

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