企業における新型コロナウイルス陽性者発生時の産業保健対応

新型コロナウイルスに影響した社会の感染状況や社員の健康管理の変化など、医療職からの経営判断を補助する産業保健職の役割が大きくなっています。社員の健康状態、PCR検査陽性になった感染者とその周りに対する業務調整や、わかりやすい「ことば」を用いて経営者に対する説明を行い、これまで以上に感染症の専門知識が必要とされています。

体調不良者が発生したときの人事・総務・産業保健職の対応


従業員が発熱や体調不良を感じたときは、医療機関や発熱相談センターへの相談や受診をすすめましょう。
同時に欠勤による人員不足に対処すべく、陽性者や体調不良者が出る前に、シフト制度の工夫やテレワークができる業務環境の整備も必要になります。

職員が陽性になったときに、人事・総務としてできること


感染者や濃厚接触者が発生した場合には、保健所からの指示のもとでの対応を行います。それ以外にも陽性者が出た場合には、人事・総務として対応をせまられることがあります。

あらかじめ、社員が陽性となった場合のフローを作成しておくことや、緊急連絡先や社内で迅速に連絡ができるツールを事前に決めておくことが重要です。

1事前に発熱等の体調不良になった場合の対応方法を社内で作成し共有する
2発熱や感冒症状・熱などの体調管理報告を日々行う
3部署ごとに名前・生年月日・住所・連絡先をまとめておく(最新の情報か確認しておく)
4社員が陽性になった場合、迅速に会社に報告するフローを作成し、社員全体に共有する
5部署ごとに一斉に連絡できる緊急連絡ツールを決め準備する(部分的にテレワークになっている場合もあるため、メール・Slack・電話・LINEなど)
6濃厚接触者は、保健所が指定した公費負担PCR検査もしくは、会社で事前に準備していた有症状者・濃厚接触者対応の郵送PCR検査を実施する
7濃厚接触者にならなかった準濃厚接触者が安心・安全に業務ができるように福利厚生でクラスター対策の郵送PCR検査を実施する
8新型コロナウイルス陽性者が隔離後、復帰する前に、他の職員の安心のためPCR検査陰性証明書があったほうが良いと判断した場合、郵送PCR検査を実施する

社員が陽性になったら?

社員が陽性になった場合、感染職員が所属する会社の保健所に連絡が入りますが、企業へ連絡がくるまでには時間がかかります。また、保健所では、濃厚接触者をリストアップするのに時間がかかり、その間にクラスター対策が遅れてしまう可能性があります。

これらを回避するため、あらかじめ社員が陽性となった時のフローを作成しておくことや、緊急連絡先や連絡ができるツールを事前に決めておくことが重要です。

また、濃厚接触者の濃厚接触者である「準濃厚接触者」を把握しておくと、保健所の積極的疫学調査や、濃厚接触者が陽性になった場合に、よりスムーズに対応ができるでしょう。

感染者発生から会社への連絡、濃厚接触者の調査の流れは?

ここで、感染職員が出た時のフローを確認しておきましょう。職員が感染した場合の主なフローを以下でお示しします。

濃厚接触者の場合、濃厚接触者となった人の住所がある保健所からの連絡を待ち、予約をいれ、実施し、検査結果、報告となります。そのため、企業へ連絡がくるまでには、陽性確認から4-10日程度かかることがあります。

発熱などの症状がある場合や濃厚接触者に指定された社員は公費で検査をすることができますが、それ以外の「準濃厚接触者」のPCR検査は、公費非対応です。

実際に職員が感染して陽性と判断された場合は、同じフロアの職員やプロジェクトに関わる社員などにまとめてPCR検査を委託する企業や、団体様のケースを多く見かけます。

企業・団体様へはこちらよりご案内しております。

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    テレフォンオペレーターが24時間ご対応いたします。

いつから体調不良者が復帰しても良いですか?

PCR検査が陽性になった方の中には、たとえ症状が発熱し、1晩だけで収まったとしても新型コロナウイルス感染症に罹患していた方も多くいらっしゃいます。
新型コロナウイルスのPCR検査を受けない場合、「職域ガイド」では、以下のような厳しい基準を推奨しています。

新型コロナウイルスの検査を受けていない者の職場復帰の目安

▼つぎの条件でをいずれも満たす状態で職場復帰させる
・発症後に少なくとも8日が経過している
・解熱後に少なくとも72時間が経過しており1)、発熱以外の症状2)が改善傾向である
   1) 解熱薬を含む症状を緩和させる薬剤を服用していない
   2)咳・倦怠感・呼吸苦などの症状

▼上記期間の休業が困難な場合には、できる限り新型コロナウイルスPCR検査を受けるようにする
▼それができない場合には、事業者の責任の元、以下の対応を取ることもやむを得ない
 ・発熱や風邪様の症状消失から少なくとも72時間が経過している状態を確認し復帰させる

職場復帰のリスク管理をしながらも8日の休みは欠勤による人員不足が経営に大きな影響が出てしまいます。

陽性者の対応や濃厚接触者の対応はもちろんですが、従業員が職場に復帰する際の基準やそれに基づくは対応は、できるだけ会社に影響が出ない状態で、企業内で新型コロナウイルス感染症のリスク管理をしたいところだと思います。

そんなときは、PCR検査を従業員が調子が悪くなった日にすぐに実施できるよう事前に職員に対し郵送PCR検査を福利厚生として配布しておいたり、会社にストックしておくことをおすすめします。

※一般社団法人日本渡航医学会/公益社団法人日本産業衛生学会 職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド 第4版 より抜粋

新型コロナウイルス陽性者の職場復帰の目安は?

保健所が指定した隔離期間終了後になれば、復帰を実施しても問題ありません。

▼つぎの条件をいずれも満たす状態で職場復帰させる
・発症後(ないし診断確定後)に少なくとも10日が経過している
・解熱後に少なくとも72時間が経過しており1)、発熱以外の症状2)が改善傾向である
   1) 解熱薬を含む症状を緩和させる薬剤を服用していない
   2)咳・倦怠感・呼吸苦などの症状(ただし味覚・嗅覚障害については遷延することがある)

※一般社団法人日本渡航医学会/公益社団法人日本産業衛生学会 職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド 第4版 より抜粋

新型コロナウイルス対策における産業保健・人事総務職に期待される役割は?

▼新型コロナウイルス対策における産業保健・人事総務職に期待される役割として主に以下のことが挙げられます。

・新しい情報を集め、事業者および従業員へ提供する
・危機管理に対応できるための助言・調整をする
・教育・訓練を行い感染予防活動を行う
・ハイリスク従業員を把握し適切な配慮を検討する
・感染者への対応、二次感染予防に関する助言・調整を行う
・適切な情報を従業員に提供しストレスへの対策を行う
・対策措置の緩和や強化に関する助言・調整を行う
・事業継続を支援するために感染予防の点から助言・調整を行う感染顧問医に相談する例
・最新の感染症情報を、事業者および従業員へ提供する
・体調不良者の方針相談
・陽性者に対する情報提供
・隔離後検査陽性になった社員の対応相談
・会社復帰のためのプラン作成

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